▼『VOW王国 ニッポンの誤植』宝島編集部 編

VOW王国 ニッポンの誤植

 声に出すと笑ってしまう.誤植はおかしくて哀しい….名作VOW,誤植界のバイブル『脱日語』入手,ニッポンを揺るがした誤植たち,歴代名作誤植,出版ギョーカイ最新誤植事情などを掲載――.

 筆で知られた夏目漱石や悪筆四天王(石原慎太郎黒岩重吾田中小実昌川上宗薫)は,校正を担当する編集者泣かせであったが,表記の誤り=誤植は読者を「脱力」させる.活版印刷の時代には活字の取り違えが誤植の多くを占めていた.しかしワープロ技術が定着するにつれ,爆発的に増えたのは誤変換である.本書に収録されているものでは,「ゲレンデがとけるほど濃い死体」≠「ゲレンデがとけるほど恋したい」.「新宿女医ポリス」≠「新宿ジョイポリス」.「教授ウニ提出」≠「今日中に提出」あたりか.

 同音異義語,平仮名,片仮名,漢字の組み合わせが,見間違いや打ち間違いで独特の日本語の語感を生み出す.だから御食事券も汚職事件に早替わり,クラプトンもプランクトンの集合体になる.週刊文春の「■訂正 先週号『名前』記載の『大和田獏』を『武者小路実篤』に訂正します(編集部)」に至っては,どんな共通点があって誤記されたのか理解不能

 感性と笑いのツボをじわじわ刺激する名作誤植のオンパレード.くだらないと思えることで疲れたら,本書を開くといい.もっとくだらないものがそこにはある.「ねたきもの 人のもとにこれより遣るも,人の返事も,書きて遣りつる後,文字一つ二つ思ひ直したる」(清少納言枕草子』第九五段)

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原題: VOW王国 ニッポンの誤植

著者: 宝島編集部

ISBN: 4796640312

© 2004 宝島社