平成ニッポンに残された最大・最後のタブー「JR革マル派問題」.なぜ,世界最大級の公共交通機関は革マル派に支配されたのか.盗聴,窃盗,内ゲバ殺人を繰り返し,警察ですら容易に手出しできない犯罪組織の実情に迫る驚愕のノンフィクション――. |
世界最大の鉄道会社JR東日本に,長らく「巣食う妖怪」とされてきた松崎明.その影響力は,人事権,経営権,設備投資権といった「企業経営の根幹」にまで達していたと本書は強調する.鬼の勤労とも称されたJR東労組とその上部団体・JR総連には,過激セクト「革マル派」が浸透している数々の事実.人権無視の組合活動,非合法手段(盗聴・脅迫・窃盗・恫喝)は,列車乗客の安全を脅かす運行妨害にまでエスカレートしていた.
中曽根内閣が断行した国鉄分割・民営化は,「戦後最大の改革」と賞賛され,行財政改革の成功例とさえ見なされる.反面,コンプライアンスからみればJR東日本は「病巣」を根深く抱えている.熱帯雨林に繁る“マングローブ”を社内コードネームに据え,傑出したアジテートで経営権にまで介入していた革マル派は,まさしく暴力装置.経営陣は自己保身から抵抗力をもち得ない不甲斐なさと共に,本書で登記簿から明らかにされるのは,5万人を超える構成員の組合費で松崎が何軒もの別荘,高級車を所有していたという破廉恥.
まるで多足類生物のごとく,熱帯地域の河口の泥地に根を張りめぐらせる「マングローブ」.そのマングローブの根のように,配下の革マル派組合活動家を,JRの 隅々まで浸透させてやる――.革マル派秘密組織につけられたコードネームからは,そんな目論見が透けて見えるようだ
1994年6月『週刊文春』がJR革マル派問題の記事を出したところ,JR東日本は管内にあるキヨスクでの販売拒否という言論弾圧に打って出た.本書は,『週刊現代』誌上で2006年7月から計24回に渡って連載され大反響を呼んだ記事を元にしている.JR東労組とその上部団体JR総連に所属する全国の組合員個人から,名誉毀損だとして本人訴訟で48件の裁判が起こされるが,著者は全て勝訴しているという.「公安捜査の神様」といわれた公安関係者さえも,革マル派に抱き込まれてきた記述には,戦慄をおぼえる.JR東海やJR西日本と違って,JR東日本が過激派に引導を渡すことができなかった理由の一端が窺えよう.
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原題: マングローブ―テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実
著者: 西岡研介
ISBN: 9784062140041
© 2007 講談社/font>