▼『四色問題』ロビン・ウィルソン

四色問題 (新潮文庫)

 四色あればどんな地図でも塗り分けられるか?一見簡単そうだが,どうにも証明できない難問として人々の頭を悩ませ続けた「四色問題」.ルイス・キャロルをはじめ幾多の人物が挑戦しながら失敗.一世紀半後,ふたりの数学者がコンピュータを駆使して解決するが,「これは数学じゃない」と拒絶反応も.天才たちの苦闘の歴史を通じ,世紀の難問が解かれるまでを描く興奮の数学ドラマ――.

 ーガスタス・ド・モルガン(Augustus de Morgan)とウィリアム・ローワン・ハミルトン(William Rowan Hamilton)の間で1852年10月23日に交わされた書簡により,平面上または球面上に描かれた地図の国を色分けする問題――四色問題――は産声を上げた.1)どの国も飛地をもたずつながっているものとする.2)海も1つの国とみなすものとする.3)隣の国とは異なる色を使わなければならない.4)2国の境が有限個の点である場合は同じ色を用いてもよい.

 各頂点から出る辺が3本の場合(3枝地図)に限っても一般性を失わないことを指摘したアーサー・ケイリー (Arthur Cayley),暫定的な定理を発表し,11年間も訂正されなかったアルフレッド・ケンプ (Alfred Kempe)の試行錯誤を経て,ヴォルフガング・ハーケン (Wolfgang Haken)とケネス・アッペル (Kenneth Appel) が,1976年7月23日,ロンドンのタイムズ紙に<平面上または球面上に描かれたどんな地図も4色だけで塗り分けできる>証明を発表した.

 ハーケンとアッペルの証明手続きは,大型コンピューターに1,000時間も計算させるもので,これが正当な数学手法でないとして批判された.これ自体,規則にしたがって色分けする手順を厳密化するに,手法がレトロであれば妥当であるのかという疑問が湧く.本書は,証明の要点だけを説明するものではない.150年あまりの期間,「色の塗り分け」という単純な命題に魅せられた人々の苦闘の歴史.

 素朴な疑問の難問的理解が証明により理論へと発展すると,それだけで終わらなくなる.証明につながる「放電法の改良」「ケンプ鎖」,可約配置からなる「不可避集合の存在」に行き着く.平面体と球体での色分けは,4次元,18次元ではどうかと新たな議論が生まれている.本書で扱う定理は,知的探索の格好の窓なのだ.ド・モルガンとローワン・ハミルトンは,ロンドンとダブリンの科学界における最新のゴシップを報告しあう間柄であった.

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Title: FOUR COLOURS SUFFICE

Author: Robin Wilson

ISBN: 9784102184615

© 2013 新潮社