▼『刻字と雅印づくり』長揚石

刻字と雅印づくり

 刻字と雅印は書の創作の発展した姿である.書くことの感興をさらに昇華させようとするとき眼前にこの二つが立ちはだかる.現代の息吹が刻字に如実にあらわれ,雅印では,方寸の美を表現する.本書は,刻字・書・雅印三昧を一冊で学べるようにしたものである――.

 事で使用する印を「雅印」といい,陽刻(浮き彫り),陰刻(沈め彫り)で書を刻すのが「刻字」である.「現代の息吹が刻字には如実にあらわれ,雅印では法寸の美が表現される」.日本刻字協会会長,全日本書道連盟理事,毎日書道会評議員毎日書道展審査会員,書道芸術院常任理事などを歴任してきた長揚石は,雅印と刻字の製作過程を平易に著した.

 刻字・書・雅印の三位一体性は,書稿から塗料,書体,印面と用具,落款と署名に至るまでの作成・形式に連続性をもった表現を示す.墨汁や絵の具で採色する陽刻,貝殻から作る顔料「胡粉」を塗布する陰刻などの技術は,書道の歴史の中では新参.

 現代からおよそ4,000年前にまで遡る甲骨文時代,亀の腹甲に刻された文字が刻字の創始であるという.過去は長いが歴史は短い.幾何学的な書体から,現代アートと呼べる書の愛好まで派生していった奥深さ.まさに,興趣が尽きないことである.

刻字と雅印づくり

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原題: 刻字と雅印づくり―書の創作

著者: 長揚石

ISBN: 9784817040572

© 2009 日貿出版社