現代政治において,今もっとも重要な概念のひとつであり,存在意義を高めつつある市民社会を理念と実践の両側面から縦横に論じた待望の書――. |
論者や識者によって好んで使われる概念でありながら,確たる定義も持ち合わせていない言葉が跋扈するのは,考えてみれば奇妙なことだ.「市民社会」(civil society)も,その例に漏れていない.より「善い世界」「礼儀正しい社会」など,抽象的すぎてこちらを煙に巻く言葉のオンパレード.
市民社会論にとって重要なことは,ある思想が正しく,その他が間違いだというものではない.異なる枠組みがどれほどの洞察を生み,それらがどれほどわれわれを有効な行動へと導いていくかということこそが重要なのだ
英国オックスファム,セーブ・ザ・チルドレンなどの機関で長年にわたりリサーチに従事した著者は,実践と理論の橋渡しをする存在に近い位置に立つ.しかし,市民社会が民主体制の遠大な計画「ビッグアイデア」になる見通しは,本書だけでは到底イメージできない.ナイーブでぎこちない翻訳が,残念な空論としての印象をさらに助長している.
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Title: CIVIL SOCIETY
Author: Michael Edwards
ISBN: 4892055409
© 2008 麗澤大学出版会