▼『革命的群衆』ジョルジュ・ルフェーブル

革命的群衆 (岩波文庫)

 烏合の衆はいかにして,歴史を動かす群衆に変貌するのか?革命を起こす心性はいかに作られるのか?歴史学が初めて正面から「群衆」に向き合い,「心性の歴史」を開拓した古典的著作.個と集合の相互作用を通じて日常の場で形成される「集合心性」に着目し,危機に面してのその変容・伝播を説き明かす議論は,ダイナミックで今なお新鮮な響きを持つ――.

 物の「群れ」と人間の「群衆」に,本質的違いはないと考えたギュスターヴ・ル・ボン(Gustave Le Bon)を批判し,かといって群衆が理性と自覚を共有していたという立場にも与さない.ジョルジュ・ルフェーブル(Georges Lefebvre)は,烏合の衆が「革命的集合体」に転化するまでに,社会過程としての触媒「集合心性」があると解釈して考察する.主たる考察対象は,「貴族の革命」「ブルジョワ革命」「都市民衆の革命」「農民革命」という四つの革命の複合としてのフランス革命

歴史家が好んで研究の対象とするのは,むしろ次の二つである.第一には,革命的運動の原因だと考える経済的・社会的・政治的な諸条件.そして他方では,革命運動のめぼしい事件や運動の成果.しかし,実際には,これらの原因と結果との間には,集合心性の形成というファクターが介在しているのだ.集合心性の形成こそが,真の因果関係を作り出す

 専制政治の象徴であったバスチーユ牢獄の襲撃も,突発的に生じたのではなく,日常的な語らいを通じ,ものの考え方・感じ方を共にするような心的作用が,群衆における特有の性格に帰せられるということである.経済的・社会的・政治的諸条件の叙述は,人々の神経を過度に昂ぶらせ,不安をその絶頂にまで高め,不安から逃れるための行動に対する見解.ルフェーブルの観点は,唯物史観による「上層からの革命」を基本的視点とした革命観とは一線を画している.

革命的騒乱が始まると,口伝えの伝達が持つ固有の特徴の一つである情報を変容させるという性格が,集合心性の強化に強い影響を及ぼす.情報は,集合心性とうまく調和するように変形され,そうした形をとることによって,集合心性の基本的な観念を確固たるものとし,集合心性の情動的要素を昂らせることになる

 貴族,ブルジョア,都市民衆,農民が統一性,連動主義が希望をもって前進したと見るところに,ルフェーブルの社会運動史研究の意義があった.民衆運動の側に視座を据えた「集合心性」の立場が,重層的なブルジョワ革命とみるフランス革命の創造的,積極的契機を分析対象としているのである.ルフェーブルは,1932年革命史研究の中心機関であるロベスピエール研究協会の会長に就任,その機関誌『フランス革命史年報』の編集責任者を務めた経験がある.

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Title: FOULES REVOLUTIONNAIRES

Author: Georges Lefebvre

ISBN: 9784003347621

© 2007 岩波書店