■「セカンド・カミング」マーシャル・レウィ

セカンド・カミング [DVD]

 米・ロス郊外に暮らすラクラン・マクアルドニックは,グリーンカードを持つスコットランド人.かつては人気UKバンド“CRANKS"のメンバーとしてスポットライトを浴びていた彼だが,現在は,昼は農場でオーガニック栽培した農作物を市場で売る農夫として,夜は往年のバンド曲を紹介する人気ポッドキャスト番組のDJとして,貧しくも穏やかな生活を営んでいた.ある夜,バーを出て家路に向かった彼は飲酒運転で連行される.取り調べが進む中,彼が昔犯したドラッグ歴が判明する….

 サンゼルス郊外で昼は農夫,夜はポッドDJとして貧困の中に暮らす陽気なラクランには,出身国スコットランドに帰郷できない理由があった.永住権をもちながら,彼はいつまでも知人から苗字を誤った発音で呼ばれ,人気UKバンド"CRANKS"のメンバーであった栄光も,今では足枷でしかない.

 グリーンカード保有していても,度重なる違法行為に対する釈放金も弁護費用も払えないならば,強制送還という行政措置がとられる.この措置を免れるには,送還により「極度の苦境」を味わう家族の存在を証明しなければならないが,10年以上連絡を取っていない元妻と娘に,その弱みを打ち明けることで,彼は自ら決定的な窮地に追い込んでしまう.

 根は悪党ではないものの,ことさら不器用で偏屈な男を演じたロバート・カーライル(Robert Carlyle)が,とにかく巧い.本作には,1990年代にロンドンやマンチェスターを中心に発生したブリットポップ・ムーブメントが背景にあるようだ.監督のマーシャル・レヴィー(Marshall Lewy)は,かつて一世を風靡したイギリス文化昂揚"クール・ブリタニア"の哀れな残滓を,ラクランという男に背負わせている.

 身勝手で癇癪もちの中年男は,一時の成功から転落したことで苦境と格闘しているようにしか見えない.しかし,母国スコットランドでバンドマンとして決定的な「過失」を犯した過去が明かされた時,以後彼が自己否定に苛まれ続けていることが理解できる. その清算の見通しもないまま,忍従を強いられる姿が痛々しいが,まだ絶望には至っていない描写にとどまっていることが救いだろうか.

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原題: CALIFORNIA SOLO

監督: マーシャル・レウィ

94分/アメリカ/2012年

© 2012 California Solo, LLC.