▼『ザ・ハウス・オブ・ノムラ』アル・アレツハウザー

ザ・ハウス・オブ・ノムラ (新潮文庫)

 とかく不透明と言われる日本の証券界に君臨し,市場支配する巨大企業・ノムラ.野村はいかにして世界のノムラとなりえたのか.いったいこれから何をめざしているのか.自らも証券マンである著者が,膨大な資料と数百人に及ぶ関係者の証言に基づき,ノムラの内幕を徹底的に暴く.同時に,証券界の驚くべき独特の体質を,ダイナミックに,そしてビビッドに解き明かしていく――.

 989年時点において,野村證券はまさに業界屈指の実力を誇った.その地位は,営業マンの卓越した粘り強さ,伝統的な年功序列にとらわれない人事の刷新によって選ばれた若手支店長たちの活躍,そして役員たちの絶妙な手腕によって築き上げられていた.

 当時の日本経済がバブルに狂乱する中,野村證券は信じ難いほどの高給を享受しており,その給料袋は文字通り「立った」.野村の成長の軌跡は,戦後日本の経済成長と見事にシンクロし,一時はトヨタの純利益をも凌駕していた.この時期において,アル・アレツハウザー(Albert Alletzhauser)は,イギリス系証券会社「ジェイムズ・ケイペル」の東京支店に在籍していた経験から,本書を執筆した.

 「ガリバー」と呼ばれ,日本の証券市場に君臨する“ノムラ”に対して彼は強い興味を抱いたが,実態に迫る本が見当たらなかったことから,数百人もの関係者への取材を基に,本書の構想を練り上げた.本書は出版当初,野村の内情を露わにした点で一定の評価を得たが,それはあまりに甘い評価といえるだろう.

ストレートなノンフィクションで「野村のすべて」を書くことはとても難しく,それはこの本の出現を待たなければならなかった

 日本で翻訳版が刊行された際には,大蔵省との関わりなど重要な箇所が削除され,野村証券はイギリスでの原著出版に対して訴訟の可能性も排除していなかった.訳者のコメントには公然たる欺瞞が滲んでいるといわざるを得ない.

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Title: THE HOUSE OF NOMURA

Author: Albert Alletzhauser

ISBN: 4102427015

© 1994 新潮社