民族大移動以前の古代ゲルマン民族について誌された最古の記録.古代ローマの歴史家タキトゥス(五五頃‐一二〇?)は,開化爛熟のはてに頽廃しつつある帝政ローマと対照させながら,いま勃興し,帝国の北辺をおびやかす若い民族の質朴勇健な姿を描き出す.簡潔な筆致のなかに警世の気概があふれる.積年の研究成果を盛った訳書――. |
ガイウス・ユリウス・カエサル(Gaius Iulius Caesar)の『ガリア戦記』と並び,ゲルマン諸部族の様相を伝える重要文献.ローマの属州ゲルマニア,ライン川の西,ドナウ川の北に居住していたゲルマン諸部族の風俗・習慣を記録する史家コルネリウス・タキトゥス(Cornelius Tacitus)の小さい書.
ローマ帝国の外縁に住むゲルマニア人を「高貴な野蛮人」とみなし,「ゲルマーニアの土地・習俗」「ゲルマーニアの諸族」といった全46章は,地誌・民族誌として史料的価値が高い.爛熟と退廃のローマ帝国の国境線に所在するゲルマニア人は,堕落・弛緩するローマ人と比較して,素朴だが活力に溢れ,質実剛健であるかのように描かれている.ローマ周辺の民族の戦力が将来の脅威となりうるかを,タキトゥスは考慮に入れて著述している.
一度もゲルマニアに足を運ぶことなく,入手した資料からゲルマンの沿革や来歴を記した.後に汎ゲルマン主義やロマン主義からは高く評価される『ゲルマーニア』だが,地理,風俗・習慣,制度の正確性には疑義が寄せられている.辛辣な皮肉でローマの行く末を案じたタキトゥスの自制的な羨望は,自由と名誉を追求するゲルマン人の情熱に向けられていることが窺えよう.
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Title: GERUMANIA
Author: Cornelius Tacitus
ISBN: 4003340817
© 1979 岩波書店