▼『裏のハローワーク』草下シンヤ

裏のハローワーク

 オモテがあれば,ウラもある.スーツを着て,定時に出社して,興味の持てない仕事をして食べていくのもひとつの生き方.しかし世の中には,そうでない仕事も多数存在する.マグロ漁船から,大麻栽培,治験バイト,夜逃げ屋,偽造クリエイターまで,世の中のあらゆる「危ない」「裏のある」仕事に密着.経験者から語られるあまりに生々しい手口のオンパレードにゾッとすること間違いなし.各職種ごとの「リスク」「収入」「労力」「犯罪性」「働き方」を掲載――.

 の欲望が尽きることがない限り,その欲と社会のニッチを埋めようとする産業が必ず存在する.ハローワークの求人票が明るく清々しいものばかりではないことは明らかだが,非合法な職種が公然と公募されることはない.本書は,カネとクスリに働く嗅覚を持つ著者が,マグロ漁船乗組員,治験バイト,出版ブローカー,原発作業員,詐欺師,マリファナ栽培,偽造クリエイターなど20種類の裏社会の労働者にインタビューを行ったもの.

 それぞれの職種について「リスク」「収入」「労力」「犯罪性」「働き方」を五段階評価している.彼らの存在や活動は,一般社会と密接に関連しており,その理解は社会の健全性と安全性にとって不可欠となる.インタビュー内容に基づく著者の分析には優れた点がほとんどない.しかし,その補完として提示されるヤミ業界のルールとプライドは,常人には理解し難いものだ.その目の付けどころと手口の呵責なさは,まさにアウトローであり,一般人には遠く及ばない世界である.

 常人がそのアングラ・ステージを遠くから見下ろすだけで身のすくむ思いがするのは当然のこと.しかし,それが正常な感覚なのだ.本書は,裏社会の労働者たちの日常を垣間見ることで,その世界に対する理解を深める機会を提供する.彼らの生活や仕事の背後にあるリスクや困難を知ることで,一般社会との対比を通じて,社会の裏側に潜む複雑さや問題点に光を当てることができる.それによって,正当な経済活動や社会活動における改善の方向性を模索する手助けとなるだろう.

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原題: 裏のハローワーク

著者: 草下シンヤ

ISBN: 4883926613

© 2008 彩図社