▼『好色五人女』井原西鶴

好色五人女: 現代語訳・西鶴 (小学館ライブラリー 38)

 「不義はお家の御法度」だった江戸時代.それは人妻だけでなく娘が自由に恋することもできない厳しい封建制度の中で,掟にそむいて「愛」を貫き通した,お七,お夏,おさんの生きざまを描く人間賛歌――.

 西鶴が41歳で発表した浮世草子の処女作『好色一代男』以来,男女の性愛を扇情的に描く「好色本」が町人文化に華を添えた.巻一「姿姫路清十郎物語」.巻二「情を入し樽屋物語」.巻三「中段に見る暦屋物語」.巻四「恋草からげし八百屋物語」.巻五「恋の山源五兵衛物語」.

 打首,島流し,自害,磔刑が待ち受ける悲恋に身を投ずる女性の烈しさ,封建道徳制度と対決し,死にゆく中に恋々たる姿.それらが渾然一体となって,あはれを誘い,人間の尊厳を問い直している.大坂(阪),京都,江戸の三都を中心に,前後に姫路と薩摩が配された五巻二十五章.

 上方町人文化に重要な軌跡を残した本書は,後世の歌舞伎・浄瑠璃にも数多く取り上げられることになる主人公たちを最初に描いた作品である.「鑑賞のしおり」では,出版禁制の目をくぐって読み継がれた「五人女」の実在モデルの巷説が確認できる.

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原題: 好色五人女

著者: 井原西鶴

ISBN: 4094600388

© 1992 小学館