National Book Critics Circle Award Finalist From the acclaimed, award-winning author of Alexander Hamilton: here is the essential, endlessly engrossing biography of John D. Rockefeller, Sr.—the Jekyll-and-Hyde of American capitalism. In the course of his nearly 98 years, Rockefeller was known as both a rapacious robber baron, whose Standard Oil Company rode roughshod over an industry, and a philanthropist who donated money lavishly to universities and medical centers――. |
ジョン・D・ロックフェラー(John Davison Rockefeller)は,スタンダード・オイル社を率いて石油業界を独占し,「泥棒男爵」として非難された人物であるが,一方で大学や医療センターに多額の寄付を行った慈善家としても知られている.この二重のイメージは,彼を単純に善悪のどちらかに分類することが難しい,複雑で謎めいた存在として認識させるものである.本書は,ロックフェラーのこの複雑な性格を巧みに描き出している.ロックフェラーは,その冷徹さから多くの敵を作った.特に,スタンダード・オイルがアメリカの石油産業を支配していた時代,彼は競争相手にとって恐怖の対象であった.当時,彼を批判する風刺画が数多く描かれ,八本の腕を持つタコ――当時のアメリカにおける富と権力の象徴――としてアメリカ全土を支配する姿が風刺された.
ビジネス手法の一つである「レート戦争」も,その悪名の一因である.ロックフェラーは石油を非常に安価で売り,競争相手を市場から徹底的に排除した.この手法によって,スタンダード・オイルは市場を独占するに至ったのである.しかし,その一方で,ロックフェラーは自身の成功を「神の意志」として捉え,慈善活動に精力を注いだ.彼の厳格なバプテスト信仰が,その行動の背後にあった.ロックフェラーは,金銭に対する冷酷さと信仰に基づく慈善の精神を巧みに共存させていたのである.ロックフェラーの生い立ちは,彼の人格形成において極めて重要な要素である.彼の父親,ウィリアム・エイヴリー・ロックフェラー(William Avery Rockefeller)は詐欺師であり重婚者でもあった.
ロックフェラーは,混乱した家庭環境で育ったが,逆にそれが彼を禁欲的で勤勉な人格へと導いた.父親の奔放な生き方を反面教師とし,彼は自己規律を重んじる道を選んだのである.慈善活動に関しても,注目すべき逸話がある.ロックフェラーは慈善活動に対してもビジネス的なアプローチを取り,寄付を行う際は,その使途を細かく監視し,受益者が自立できるような仕組みを構築することに腐心した.彼の寄付により設立されたシカゴ大学やロックフェラー財団は,その代表例である.また,ロックフェラー医学研究所――現在のロックフェラー大学――も彼の寄付により設立され,黄熱病や鉤虫症の治療法発見に寄与した.ロックフェラーの慈善活動は単なる資金提供にとどまらず,社会全体への持続的な利益をもたらすことを目指していた.
晩年のロックフェラーは毎朝新聞を読み,自身を描いた風刺画や批判記事を見ては笑い飛ばしていた.自らが時代の象徴として世間にどのように見られているかを完全に理解しており,その評価をある種のユーモアで受け流していた.このような皮肉なユーモアのセンスが,冷徹なビジネスマンという側面だけでなく,私生活での人物像をより一層豊かにしている.本書は,これまで未公開であったロックフェラーの個人的な手紙や日記にも基づいている.そのため,その内面に迫り,家族や信仰に対する強い思いがどのようにビジネスや慈善活動に影響を与えたかを明らかにしている.ロックフェラーの一貫した行動原理は「神の意志を果たす」という使命感に基づいていた.富の追求とその富を社会に還元することは,表裏一体であった.
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Title: TITAN - THE LIFE OF JOHN D. ROCKEFELLER, SR.
Author: Ron Chernow
ISBN: 1400077303
© 2004 Vintage