▼『悲恋の詩人 ダウスン』南條竹則

悲恋の詩人ダウスン (集英社新書 445F)

 十九世紀末の英国,貧苦と悲恋と不治の病と酒に彩られた人生をおくり,まさに"不幸なる詩人"の典型だったアーネスト・ダウスン.破滅に向かうその生涯は,倦怠と絶望を歌った彼の詩と見事な諧調を奏でている.ある研究家は言う,「ダウスンは究極の詩人だった」と.映画で有名な『風と共に去りぬ』の原題は,ダウスンの詩からの引用であり,ノーベル文学賞を受けた二十世紀の詩人エリオットは,ダウスンの自らへの影響を認めたうえで,その「技術的な革新が過小評価されている」と指摘している.この詩人をこよなく愛する著者による本邦初の評伝――.

 ンドン出身の詩人アーネスト・ダウスン(Ernest Dowson)は,デカダン派に分類される.しかしダウスンには,衰退を無念に思うほどの成功や安定と生涯無縁だった.爛熟から衰退,破滅に向かう過程が元々の「デカダンス」であるならば,倦怠と絶望に彩られた人生には「未満」の評価が正当なものに近い.

 放蕩生活での悲恋,両親の自殺,貧困と酒と肺病の果ての夭折.「破滅に向かう彼の人生が,倦怠と絶望を歌うその詩と見事な諧調を奏でている」.ダウスンの詩には,忍び寄る死に黄昏を看取したような諦念が漂う.

 この詩人の魂はいわば,毒されたり衰えたりする過程を癒そうとする自然の努力のあらわれ.フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale)の定義した「看護」の一節にも似た理解で,味わいたい嘆きが色濃いのである.

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原題: 悲恋の詩人ダウスン

著者: 南條竹則

ISBN: 9784087204452

© 2008 集英社