Books(人文)

▼『科挙』宮崎市定

二万人を収容する南京の貢院に各地の秀才が官吏登用を夢みて集まってくる.老人も少なくない.完備しきった制度の裏の悲しみと喜びを描きながら,凄惨な試験地獄を生み出す社会の本質をさぐる――. およそ70万余字「四書・五経」.その暗記から始まる“科挙”対…

▼『マリー・アントワネット』安達正勝

名門ハプスブルク家に生まれたマリー・アントワネットは,フランス王妃となり,ヴェルサイユ宮殿で華麗な日々を過ごしていた.だが,一七八九年のフランス革命勃発で運命が急変.毅然と反革命の姿勢を貫き,三十七歳の若さで断頭台の露と消えた.悪しき王妃…

▼『司馬遷と史記』エドゥアール・シャヴァンヌ

父,司馬談の意志を継ぎ,“宮刑”という屈辱的体験の中から生み出された「史記」.著者司馬遷が辿った人生,思想を掘り起し,古代ヨーロッパの歴史家との比較研究を試みたユニークな史記研究――. 司馬遷『史記』以前に,40世紀にわたる民族の歴代正史の道はな…

▼『狂気の偽装』岩波明

現代日本で急増する「心の病」.マスコミは,新たな社会現象に合わせて乱造された「病名」を喧伝し,悲惨な事件が起これば被害者を「PTSD」だと安易に決めつけ,「心のケア」を気軽に叫ぶ.だが,それは正しい診断なのか?その患者は本当に精神疾患なのか?精…

▼『ロダン』菊池一雄

一 ロダンと日本,二 人間ロダン,三 鼻のつぶれた男,四 青銅時代,五 歩く人,六 地獄の門,七 カレーの市民,八 ヴィクトル・ユーゴー,九 バルザック,一〇 肖像,一一 晩年のロダン,一二 ロダンの芸術,年譜・参考文献,あとがき――. 彫刻にこそ真の姿…

▼『李白詩選』李白

世紀,盛唐の詩界に忽然と現われ,中国文学史に不滅の光を放ちつづける太白星,李白(701-62).著名な絶句・律詩・古体詩のほか,新たに散文詩として賦と序を加え,そのリズム感あふれる主要作品120首を精選.最新の研究成果に基づく訳注により,奔放にし…

▼『シェパード』フレデリック・フォーサイス

クリスマス・イブ,若いパイロットの操縦するヴァンパイヤ戦闘機が基地を飛び立った.故郷での楽しいクリスマスが待っている…事故は北海上空,高度一万フィートで発生した.すべての計器が止まったのだ.眼下は一面の霧の海.ヴァンパイヤは方向を失い,漆黒…

▼『無影燈』渡辺淳一

直江は大学病院の講師まで務めた優秀な外科医であったが,何故かエリートの道を棄て,個人が経営するオリエンタル病院の一医師として働いていた.どこかニヒルな影のある直江に惹かれた看護婦の倫子は,やがて彼と深い関係を持つようになったが,それでも容…

▼『象徴表現とはなにか』ダン・スペルベル

エチオピア・ドルゼ族の文化を素材に,神話,言語から,礼儀作法の所作までを広く分析の対象にして,象徴表現の一般理論を提出しようとする意欲作――. 西欧の認識論は,ルネ・デカルト(René Descartes)の提起した「外界によってもたらされる知識に対して,…

▼『万葉集の美と心』青木生子

激しい恋の情熱,みずみずしい自然の感動,また,悲運に立ち向かう傷ましい魂のおののき.あえかな美をいつくしむ心,そして,健やかな哄笑.『万葉集』20巻のうちに見出されるのは,上代日本人のひたむきな生活と心情である.本書で著者は,1つ1つの歌を手…

▼『西部戦線異状なし』エーリッヒ・マリア・レマルク

1918年夏,焼け爛れた戦場には砲弾,毒ガス,戦車,疾病がたけり狂い,苦熱にうめく兵士が全戦場を埋め尽す中にあって,冷然たる軍司令部の報告はただ「西部戦線異状なし,報告すべき件なし」.自己の体験をもとに第一次大戦における一兵士ボイメルとその戦…

▼『炎の人ゴッホ』アーヴィング・ストーン

ゴッホ逝いて百年.鮮烈な印象と深い感動を,今なお与えずにおかない"弧高の天才画家"は,どのように悲運の人生を歩み,あの数数の不朽の名作を遺したのか‥‥ゴッホが燃焼し尽くした魂の軌跡を,ドラマチックな構成と繊細かつ簡勁な文体で忠実に再現し,伝記…

▼『アダムとイヴの日記』マーク・トウェイン

この世で最初の人間,アダムとイヴの書いた日記が発掘された…「アダムの日記」「イヴの日記」それぞれに描かれた,アダムから見たイヴ,イヴの目に映ったアダム.そのすれ違いぶり,ものの見方の違いが笑いを誘う.おかしくて,最後にはほろりとさせられる,…

▼『椿姫』デュマ・フィス

歓楽の生活をなげうち,真実の恋に生きようとする娼婦マルグリットと純情の青年アルマンの悲恋の物語.何ものにも代え難いその恋さえ恋人の前途のため諦めて淋しく死んでゆくマルグリットに作者は惜しみない同情の涙を注ぐ.汚土の中からも愛の浄化により光…

▼『清貧の思想』中野孝次

生活を極限にまで簡素化し,心のゆたかさを求めたわれらの先達.西行・兼好・光悦・芭蕉・良寛など清貧に生きた人々の系譜をつぶさにたどり,われら今いかに生きるべきかを改めて問い直す――. 質素で貧しい生活ではあるが,正しい行いをする生活を「清貧」と…

▼『スーツの神話』中野香織

1666年10月7日,時のイギリス国王・チャールズ二世の「衣服改革」によって,この世に新しい服が生まれた.以来,現代と同じ「スーツ」が十九世紀後半に登場するまでのイギリス男性服の変遷をたどり,スーツの魅力と奥深さを考える.貴族の処世術としての服か…

▼『荻窪風土記』井伏鱒二

関東大震災前には,品川の岸壁を離れる汽船の汽笛がはっきり聞えたと言われ,近年までクヌギ林や麦畑が残っていた武蔵野は荻窪の地に移り住んで五十有余年.満州事変,二・二六事件,太平洋戦争‥‥時世の大きなうねりの中に,荻窪の風土と市井の変遷を捉え,…

▼『大地』パール・バック

19世紀後半から20世紀初頭にかけて古い中国が新しい国家へ生まれ変わろうとする激動の時代に,大地に生きた王家三代の年代記.貧しく,わずかばかりの土地を大地主の黄家から借りて耕す王龍は,黄家の奴隷の阿蘭を嫁にもらうことになった.働き者の阿蘭を得…

▼『見るということ』ジョン・バージャー

すべての芸術は生の文脈とのかかわりを持つ‥‥写真が発明されて以来,人間はさらに多くの膨大なイメージに取り囲まれてきた.そこでは,「見る」という行為が人間にとって不可避な事態として浮かび上がってくる.それは自らの生の経験の蓄積を,歴史・社会・…

▼『出雲の阿国』有吉佐和子

戦塵いまださめやらぬ桃山の世に,絢爛と咲いた一輪の華…やがて天下一の踊り手と謳われることになる乙女は,雪深き出雲に生を受け,舞の才を花開かせてゆく.歌舞伎の創始者として芸能史に燦然と輝く阿国の妖艶な生涯を描いた渾身の大河巨篇.昭和四十四年度…

▼『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』米原万里

一九六〇年,プラハ.小学生のマリはソビエト学校で個性的な友だちに囲まれていた.男の見極め方を教えてくれるギリシア人のリッツァ.嘘つきでもみなに愛されているルーマニア人のアーニャ.クラス1の優等生,ユーゴスラビア人のヤスミンカ.それから三十年…

▼『紅い花』フセーヴォロド・ガルシン

極度に研ぎ澄まされた鋭敏な感受性と正義感の持主であったロシアの作家ガルシンには,汚濁に満ちた浮き世の生はとうてい堪え得るものではなかった.紅いケシの花を社会悪の権化と思いつめ,苦闘の果てに滅び去る一青年を描いた『紅い花』.他に,『四日間』…

▼『敬語日本人論』荒木博之

敬語ときけば,ていねいな言葉,しかし古くさい「言葉」という連想が働く人が多いだろう.だが敬語は,単に古くさい言葉ではないし,従来の「ていねい語」「尊敬語,謙譲語」といった国語学的な分析ではその全貌も本質もとらえることはできない――. 敬語は単…

▼『革命的群衆』ジョルジュ・ルフェーブル

烏合の衆はいかにして,歴史を動かす群衆に変貌するのか?革命を起こす心性はいかに作られるのか?歴史学が初めて正面から「群衆」に向き合い,「心性の歴史」を開拓した古典的著作.個と集合の相互作用を通じて日常の場で形成される「集合心性」に着目し,危…

▼『変体少女文字の研究』山根一眞

この文字を知ることは,新人類を知ることだ.21世紀は弱々しく幼稚な社会となるのか?長期間の執拗な取材で,ついにその謎を判明させた渾身のノンフィクション!マンガ文字,丸文字とも呼ばれている〈変体少女文字〉は,昭和53年頃から猛烈に普及しはじ…

▼『科学と宗教と死』加賀乙彦

「死」を考えることは「生」を考えること…精神科医でありまたキリスト教の信徒でもある作家が82年の人生で続けてきた死をめぐる思索の軌跡を綴る.自身の病,妻の死と厳しい試練に見舞われながら希望を失わない生き方の秘密が明らかに――. 陸軍幼年学校で「…

▼『徒然草』吉田兼好

現存最古の版本といわれる流布系統本を底本に,懇切な校注,解説並に現代語訳を添え,連綿と読み継がれてきた必読の随想録“徒然草”に流れる思想・哲学・人生観を,わかり易く現代に蘇らせた新編集.巻末に語彙索引を付す――. 鎌倉後期~南北朝期という成立時…

▼『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ

本書はチェコ出身の現代ヨーロッパ最大の作家ミラン・クンデラが,パリ亡命時代に発表,たちまち全世界を興奮の渦に巻き込んだ,衝撃的傑作.「プラハの春」とその凋落の時代を背景に,ドン・ファンで優秀な外科医トマーシュと田舎娘テレザ,奔放な画家サビ…

▼『スタインベック短編集』ジョン・スタインベック

自然との接触を見うしなった現代世界にあって,スタインベックの提出する人間と自然の端的な結びつきは,その単純さゆえにいっそう神秘的に感じられる.うっとうしい農場生活をおくる人妻の,いっときの感情の昂揚と,その手痛い挫折を描いた名作『菊』をは…

▼『トムは真夜中の庭で』フィリパ・ピアス

友だちもなく退屈していたトムは,真夜中に古時計が13も時を打つのを聞き,ヴィクトリア時代の庭園に誘いだされて,ふしぎな少女と友だちになります.歴史と幻想を巧みに織りまぜた傑作ファンタジー――. 幼稚園(Kindergarten)という言葉の本来の意味は,「…